藤本タツキさんのセンスが輝いた長編読み切り漫画「ルックバック」は「感動した」という声がある一方で、「つまらない」というコメントがネット上に転がっています。
「ルックバック」に限らず、娯楽・趣味というジャンルは好みで左右されるものです。
よって「つまらない」といったアンチは別に平凡ではあるものの、せっかくなので「ルックバックはつまらない」という感想から見えてくるモノを解体していきましょう。
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「ルックバック」はつまらない?「理解できない」などの感想を集めてみた
まず「つまらない」といった感想を取り上げてみると↓
ルックバック全然良いと思わなかったので今日一日ゲボ吐きそうにながら仕事してた。
— 呉深蹲(Wú Shēn dūn) (@atsumalin) July 19, 2021
むしろ、悪い焔モユルのように「ああ、藤本タツキのいつものやつね」とさえ思ってしまった。
なにか良いものを描きたくてしょうがない下心が見え透いていて、つまらないとさえ思った。
アンケートも送らなかった。 https://t.co/Vi7K6JaKvE
ルックバック読んだ!つまらないとは言わんけど大して面白くもない!
— OsbeƦg窶寂 (異世界転生/転移モノ好き) (@Etron_fou) August 2, 2021
修正前だとして評価は多分変わらない。
なんでこんなに世間の評価高いんだろう?いやマジでどこらへんがツボだったの?
など実にストレートに厳しいコメントが連なっています。
さて、これらの感想は「ルックバック」を知るうえでは大変参考になる口コミやレビューの1つですが、考察していく材料としては少々役不足です。
というのも、
・「つまらない」というコメントに具体性がない
からに尽きます。
例えば「面白くなかった」という感想がありますが、
・なるほど、この人は「ルックバック」を読んで面白くなかったのか……それで?どこが面白くなかったの?なぜ面白くないと思ったの?
・むしろ、どんな作品なら面白いと感じるの?その作品、教えてよ
といったような問いかけに答えられるような感想がほとんどないのです。
あとは「つまらない」というコメント以外に必ず「世間が~」「藤本タツキが~」「自分が~」などディスりが入るのも共通点に挙げられます。
これは恐らく自分の「つまらない」という感想が正当なもの、あるいは「こう言っていたけど自分はあなたの敵ではないですよ」というアピールだと思います。
あえて不利になることで周囲からの応援を得られる効果は「アンダードッグ効果」、いわゆる判官びいきとも言われていますが、「敵対したくない」と思った時にすると効果が抜群です。
「ルックバック」つまらないと言った人たちがそう思ったポイントとは?
具体性がないこと、感想以外に自虐を入れて正当化しようとすることが「ルックバックはつまらない」という感想の特徴でした。
筆者はルックバック面白かった!派であるため、アンチな意見はいまいち分かりません。
それでも「つまらない」と言った人たちがそう思ったポイントを想像するなら
・長編とはいえ、読み切りにしては長すぎる
・テンポがだるい
・ワクワクするような出来事がない
ことだと思いました。
長編とはいえ、読み切りにしては長すぎる
これはご紹介した感想にもありましたが、「ルックバック」はなかなか長いストーリーです。
通常、読み切り漫画は1話完結モノなので十数ページから数十ページが基本となってます。
しかし「ルックバック」の総ページ数は140ページ前後。
「長編」と銘打っているものの、読み切り漫画というジャンルにしてはかなり長いです。
この長さについていない、あるいは15ページ程度に話を区切ってほしかった人たちが「つまらない」と声を上げているのではないでしょうか?
テンポがだるい
「ルックバック」の時間の流れはとてもリアリティです。
これといった大きな事件も出来事もなく、変化といったら窓の景色や人間関係、主要キャラである藤野と京本の外見のみとなっています。
このリアリティがだるい、もっと言うなら藤野と京本が成長するポイントが派手ではなかったから「だるい」という印象を与えているのではないかと思いました。
ワクワクするような出来事がない
「ルックバック」はクリエイターのための漫画であり、京アニ事件への追悼作品でもあります。
そのため流行りモノにありがちな展開は一切ありません。
藤野と京本に恋人ができてラブコメが始まったり、藤野と京本に仲間ができてコントのような事件に巻き込まれたりすることはないです。
いわゆるファンタジー的なワクワク感がないことが「つまらない」「面白くない」「読まなければ良かった」に繋がっていると思います。
「ルックバック」万人はファンタジーと共感がお好き?
「ルックバック」のつまらない感想を調べていくなかで、気になるツイートを見つけました↓
なんだろう、ルックバックを理解できなかった人が売れうつ最新話で救われたって話めちゃくちゃモヤモヤするな…「凄い人達が称賛する漫画だから、つまらないと思う自分は才能がない」という自虐思考に陥るの?じゃあ、凄い人達からの賞賛がなかったら?叩く人が多かったら?逆に安心するんです??
— みたむらまこ🌈 (@tamacomori) July 22, 2021
このツイートにある「売れうつ」とはBL漫画「売れっ子漫画家×うつ病漫画家」のことです。
タイトル通り、うつ病になった漫画家・福田矢晴(古印葵)とそんな矢晴を異様なまでに慕う売れっ子漫画家・上薗純(望海可純)のやり取りを描いています。
イラスト・小説投稿サイト「pixiv」で投稿されると「泣いてしまった」「共感できる」など反響を呼び、公開されてから間もなくTwitterのキーワードで急浮上したほどです。
漫画をテーマにしている点は「ルックバック」と同じですが、両者には決定的に違うところがあります。それはズバリ
・リアルかファンタジー
でしょう。
「ルックバック」がその性質上、ひたすら現実的であるのに対して「売れっ子漫画家×うつ病漫画家」の主要キャラの関係はリアルに置き換えたらあり得ないものだと思います。
純は矢晴を慕っているものの、時折不穏な表情や言動を見せます。
そんな人物に自分のテリトリーに入り込まれるのは恐怖でしかないと筆者は思うものの、これは漫画なので「ありだな」とも思っています。
それどころか純の真意がどこにあるのか、気になるところです。
また矢晴のうつぶりも共感しやすく、それが「売れっ子漫画家×うつ病漫画家」の人気の理由になっています。
思うに万人が好むジャンルはファンタジーであること、そして共感しやすいことなのでしょう。
いわゆる転生モノや異世界トリップモノは自分と同じく平凡、もしくはそれ以下の主人公が異世界に行くと立場が逆転する展開が見どころになっています。
また魅力的なキャラと仲良くなっていく展開ももはや古典的ですが、こうした
・「現実では叶わないことを自分のようなキャラが叶えていく」
ことに万人のニーズが満たされているような気がしてなりません。
余談ですが、筆者はファンタジーと共感を満たした作品の原型として「サモンナイト」を思い浮かべます。
「サモンナイト」は2000年から始まったゲームシリーズで、その第1作は日本の高校生が異世界に召喚されるというストーリーでした。
バトルはシミュレーションシステムで、苦手な人は苦手だったかもしれませんが、「夜会話」などキャラの好感度を稼ぐシステムが導入されており、ある種のキャラゲーな一面もありました。
今でこそは最新作が不評に終わったのでオワコンなイメージが強いものの、現在の人気作につながるポイントは多いと思われます。
関連記事:ルックバックはどこで読める?おすすめのアプリや見どころなど
まとめ
「ルックバックがつまらない」という感想は結構あるものの、具体性がなく、自身のコメントやツイートを正当化しがちでした。
そのため「何が面白くなかったのか」はいまいち分かりませんでしたが、話が長すぎることやテンポがだるいこと、ワクワク感がないことが「つまらない」と思われた原因なのかもしれません。
そうでなくてもファンタジー要素と共感性がなかったのが「ルックバック」の不評に繋がっているように考えられます。