サブカルチャー作品において付き物なのがファン活動、もとい二次創作(イラスト・ss)です。
「ウマ娘」にも数多くのイラスト・ssが見受けられますが、ヤンデレな二次創作が目立つのが実際のところです。
これは公式をリスペクトしたわけではなく、単純に投稿ユーザーの都合が大きいです。
今回はそんなウマ娘のヤンデレssについて迫っていきましょう。
ヤンデレになったウマ娘のssはどれぐらいある?人気は?
まずサブカルチャー作品のファンフィクションもとい二次創作といったらpixivとハーメルンが挙げられます。
pixivは元々イラストに特化した投稿サービスサイトでしたが、2011年頃からは小説の投稿も可能になりました。
以来、小説編集部という専門チームが小説機能を管轄しているものの、どちらかと言えば創作よりも二次創作のほうが盛り上がっています。
一方、ハーメルンは小説投稿サイト「小説家になろう」の別館としてオープンしていた「にじファン」の後続サイトです。
「にじファン」とは文字通り二次創作専門の小説投稿サイトでしたが、年々著作権や二次創作の取り締まりが厳しくなった影響で2010年7月にサービスが終了しました。
「ハーメルン」はその時「にじファン」がなくなったことで作品投稿ができなくなったユーザーの受け皿として有志が立ち上げたサイトとなります。
有志たちが立ち上げたサイトは他にもあり、それに加えて「ハーメルン」は個人運営ではあるものの、その登録者数は2021年8月時点で約31万以上になっているほどの人気ぶりです。
さて、そんな二次創作(ss)の双璧とも言えるpixivとハーメルンでもウマ娘はとても好まれており、
・pixiv:48.605作品
・ハーメルン:2.018作品
も投稿されています(2022年4月現在)。
(なおこの作品数は「ウマ娘プリティーダービー」と検索した場合で、「ウマ娘」と検索した場合であればpixivなら34.334作品、ハーメルンなら2.093作品に変わります)
1万件もの作品数を叩き出している人気ジャンルと比べれば少ないほうかもしれませんが、本当に二次創作(ss)が少ないジャンルであれば一桁や二桁であってもおかしくはありません。
よって「ウマ娘は二次創作(ss)が充実している」と見なして間違いないです。
さて、この作品数から「どれだけヤンデレになったウマ娘のssがあるのか?」と調べたところ
・pixiv:777作品
・ハーメルン:65作品
と思ったよりも少ない数字が叩き出されました。
しかしこうした二次創作(ss)の注目度は高いらしく、pixivでは80~500以上のユーザーがブックマークしています。
同様にハーメルンでも投票者による評価が平均8以上となっており、作品の面白さの基準となっている「調整平均」が赤メーターになっている作品が多いです。
また「ウマ娘 ss ヤンデレ」と検索エンジンで入力すると、相応に人気が高い二次創作(ss)がヒットします。
つまるところ数字として見る分には少なく感じるものの、ヤンデレになったウマ娘の二次創作(ss)は非常に需要があるというわけです。
そもそもヤンデレとは何か?どうしてウマ娘をヤンデレ化するの?
それでは何故ウマ娘をヤンデレにしていくのか、ヤンデレの概要を踏まえながら解説・考察していきましょう↓
ヤンデレは「好きな人が第一」すぎる状態
そもそもヤンデレとは「病み」+「デレ」をかけ合わせた造語で、2000年代に「ツンデレ」とともに広まりました。
分かりやすく言ってしまうと普段はデレデレと好意的であるのに、時々心が病んでしまった状態になることを「ヤンデレ」と言います。
要するに「好き」という気持ちが暴走しているということです。
そのため「メンヘラ」と混合されがちですが、現状
・ヤンデレ=好きな人からの愛情が第一
・メンヘラ=愛される自分になることが第一
となっています。
両者は似ていること、また同年代に世間に知られるようになった造語であることから互いに互いの役割や意味合いを共有したり分割したりしました。
結果ヤンデレはキャラクターを引き立てる萌え要素(例、ギャップ萌えなど)として、ヤンデレは自己中心的な要素となります。
ウマ娘をヤンデレにするのは便利だから?
結論から言ってしまうと、ウマ娘をヤンデレにするのは
・ヤンデレが好意の頂点だから
・ヤンデレは分かりやすいから
・ssを書くうえでヤンデレは便利なツールだから
が挙げられます。
まず「好きな人が第一」、さまざまなプロセスを経たこのヤンデレの到達点はウマ娘との相性が抜群でした。
というのもウマ娘たちはゲームにしてもアプリにしても、特定の人物に強い感情を抱きます。
対抗心・信頼・保護欲……感情は多種多様であれど、この感情を二次創作(ss)では増幅させている傾向が強いです。
その結果、好意の頂点であるヤンデレ化になってしまったのだと思います。
つけ加えるならヤンデレは「とても分かりやすい」ということもウマ娘がヤンデレ化してしまう理由のひとつでしょう。
例えば単純に「大好き!」と言われるよりも、「あの子と仲いいんだね?」と嫉妬されたほうが相手からの好意がダイレクトに伝わりやすいかと思います。
それに二次創作もといssは文字を使ってキャラや感情を表現しなくてはなりません。
イラストでは顔や体の動きで感情を表現できるものの、文字のうえでは細やかな描写が必要になります。
しかしssを読みに来たユーザーは作品の文章力を読みに来たわけではなく、ストーリーを読みに来たのです。
そのため描写よりもキャラがどんな台詞を言い放つのか、またどんな展開になっていくのかを優先します。
その起伏を簡単につけるにはヤンデレというツールは非常に便利です。
「さっき話していたのは誰?」と問い詰められるシーンを描けば読みに来たユーザーを容易く引き付けられるし、ウマ娘が色仕掛けをしたり修羅場にしたりなど展開もつくりやすいからに尽きます。
ヤンデレ化したウマ娘ssのタグまとめ!
ヤンデレになったウマ娘たち、ひいてはヤンデレ化したウマ娘の二次創作(ss)には
・「愛が重馬場」
・「冷静さを取り戻せるといいのですが」
などレースとかけたタグや俗語がつけられています。
特定のウマ娘がヤンデレ化した二次創作(ss)であればそれに関したタグがつけられており、一目瞭然です。
そこで一部ではありますが、そのタグをまとめてみました↓
トウカイテイオー | ・しっとりテイオー/闇のテイオー アプリ版でよくトレーナーと他のウマ娘のかけ合いを目にし、対抗心を燃やすことからヤンデレ化しているウマ娘。 そのため上記のタグが生まれているほど。 |
シンボリルドルフ | ・嫉妬リルドルフ アプリや漫画などメディアによって性格が異なるウマ娘だが、このタグはアプリ版のスキル「独占力」と強い保護欲を発揮したことが由来となっている。 |
アグネスタキオン | ・アグネス妬キオン 実験好きのウマ娘で、アプリ版ではトレーナーは彼女の面倒を看ていくことになる……が、このせいで依存していく描写が盛り込まれたssが多い。 あとはシンボリルドルフと同じく、スキル「独占力」を持っているせいだと言われている。 |
カレンチャン | ・LockonCurren 妹キャラを全面に押し出すウマ娘であるが、別なウマ娘(ダイワスカーレット)の育成に励むトレーナーを誘惑するというインパクトを残した。 またウマ娘では「SNSでの有名人」という設定もあるため、狙ったお兄ちゃん(お姉ちゃん)は可愛さとフォロワーを武器に追い込むところにかけてこのタグが生まれたらしい。 |
グラスワンダー | ・グラス病ンダー このタグはアニメ第1期に由来している。 グラスワンダーはクラスメイトとしてスペシャルウィークとのレースを楽しみにしていたのだが、当のスペシャルウィークは当時憧れていたサイレントスズカしか頭になかった……それを思い知ったグラスワンダーはスペシャルウィークに自分というライバルを叩きつけるべく、迫真の走りを見せて勝利した。 このやり取りが一部のファンから「ヤンデレ」に見えてしまい、このタグが生まれるきっかけとなる。 |
好きすぎるのも考えもの!?ウマ娘二次創作ガイドライン!
ゲームにしてもアニメにしても商業的作品である以上、二次創作(ss)はつきものです。
ファン活動を通して作品を知る人もおり、公式からすれば良い広告塔ではあるものの、ウマ娘は行き過ぎる傾向がありました。
男性ユーザーのファンが多く、それゆえにヤンデレssが流行したのですが、ヤンデレ以上のssもじわじわと増えるようになったのです。
有体に言えば、成人指定向けの二次創作となります。
先述したようにウマ娘のファンは男性ユーザーが多く、彼らは大なり小なりウマ娘を異性として見てました。
だからこそヤンデレ化させるssもウケが良く、徐々に肌の露出が目立つセクシーなイラストも増えていったのです。
現在もそうですが当時からウマ娘公式は成人指定を認めておらず、厳禁としていました……が、逆にギリギリを攻めた作品の増加につながってしまいます。
競馬を擬人化した作品とはいえ、競走馬のイメージを損なうリスクを配慮して公式は馬主と検討を進めた結果、2021年11月10日、二次創作のガイドラインを規定します。
簡単に言ってしまうと
・ウマ娘の作品や第三者の名誉などを害することを目的した作品
・暴力的・グロテスク、性的描写を含めた作品
・特定の政治・宗教・信条を過度に支援、もしくは貶める作品
・反社会的な表現がされた作品
・第三者の権利を侵害している作品
の公開は認めず、もしもこれを破った場合は法的処置も辞さないというガイドラインです。
これにより一部のユーザーからの罵詈雑言はあったものの、ウマ娘の二次創作(ss)の過剰な熱は冷えていきました。
とはいえ現在でも堂々と成人指定なイラスト・ssは相次いでおり、それらは「マイピク限定公開」など限られたユーザーにしか公開しない体で投稿されています。
もっとも二次創作ガイドラインはファン活動を委縮させるためのものではないため、現状が一番無難なのかもしれません。
まとめ
ウマ娘の二次創作(ss)でヤンデレが一定の人気があるのは好意が分かりやすく面白い、そのうえ投稿するユーザーにとってヤンデレは便利なツールだからです。
それゆえに「愛が重馬場」や「しっとりテイオー」など数々の有名なタグを生み出します。
その勢いは徐々に過剰となっていき、性的な意味合いが強いイラスト・ssが増えていったものの、2021年11月に定められたガイドラインのおかげで冷静になりました。