無理なぐらい無理。1話でギブアップした。激鬱。
面白いというツイートがある一方で、そんなネガティブな感想もあふれている「タコピーの原罪」。
連載当時からその鬱展開から読者は振り回されていましたが、同時に絶大な人気を誇りました。
「タコピーの原罪」は悪感情を引き起こしながらも、なぜ人気作になれたのでしょうか?
今回は「タコピーの原罪」がなぜ人気作になったのか、考察していきたいと思います。
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「タコピーの原罪」絶望しかないのになぜ人気?その理由を解説(※ネタバレ注意)
「タコピーの原罪」はイジメ・家庭崩壊・自殺など人間の暗部や社会のいびつさをダイレクトに描いており、それがあまりにもダイレクトだったため、「タコピーの原罪」を読んだ読者は良くも悪くも心を揺さぶられました。
通常、悪感情を呼び起こす作品は好まれません。
特に人の正義感に火をつける作品・展開は作品の批判だけでなく、関係者も巻き込まれてしまいます。
(例:「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」、日曜日のたわけなど)
「タコピーの原罪」で挙げるならタコピーでしょうか。
ハッピー星人のタコピーはピュアである反面、善悪でしか物事を推し量れません。そのため人間の価値観を理解できず、場合によっては「殺人をすれば幸せになれるんだよね」という始末です。
登場人物たちの境遇や精神状態がどす黒い人間性を示しているなら、タコピーは狂気と言えます。
しかし「タコピーの原罪」は炎上せず、有終の美を飾りました。
最終回を果たした今ではすっかり人気作の仲間入りです。炎上騒ぎとなってもおかしくなかったにも関わらず、なぜ人気作になれたのか。それは大きく分けて
・伏線回収のあざやかさ
・無駄のないテンポと描写
・考察できる楽しさ
の3つのポイントが挙げられると思います。
伏線回収のあざやかさ
伏線回収は「タコピーの原罪」が絶賛されているポイントとして有名です。
例えば第1話から描かれていたタコピーのクセ。タコピーは初めて聞く単語には必ず“”をつけて喋ります(例:“よねんせい”など)
しかし第1話におけるタコピーの台詞に注目すると“”をつけなくてはならない言葉に“”がついていなかったのです。
それはヒロインであるしずかの名前でした。
タコピーはしずかと初めて会ったはずなのに、何故か“”をつけずに声をかけています。
それが意味していたのは
・タコピーはすでにしずかを知っていた
ということです。
それは第13話にて証明されます。第1話でタコピーがいた時間軸は2016年でしたが、実はタコピーが初めて地球に降り立った時間軸は2022年だったのです。
この2022年のタコピーが「幸せにしたい」と必死になっていたのはしずかではなく、まりなでした。
しずかにそうしたように救いのないまりなをタコピーは支えていましたが、まりなは交際していた直樹がしずかのことを忘れられず、別れを告げたことで精神のバランスが崩壊。自分の母親を手にかけます。
そして「小学4年生の時にしずかを殺しておけばよかった」と呟くのですが、それを聞いたタコピーはそれを実行しようとハッピー道具でタイムスリップしたのです。
けれども2016年に向かおうとしたところ、タコピーはハッピー星人の掟を破ったとして自分の母親に記憶を消されてしまいます。
その状態で2016年、すなわち小学4年生のしずかと出会ったのが第1話の真相でした。
このいきさつはタイトルの「タコピーの原罪」にもかけており、あまりにも衝撃的な展開にTwitterは騒然となりました。
無駄のないテンポと描写
イジメ・ネグレイト・不倫など救いのなさばかりに目がいくものの、そんな「タコピーの原罪」が読めるのはテンポがいいからでしょう。
夫婦喧嘩にせよイジメにせよ、そうした見ていて辛いシーンがしつこく繰り返されることはありません。
(とはいえ辛いシーンが終わったとしても、また新たな辛いシーンが待っているのですが……)
つまり切り替えが良いのです。
その切り替えの良さ・無駄のないテンポが急展開を生み、「これからどうなっていくのか?」と読者を惹きつけたと思います。
また被害者だったしずかが徐々に加害者になっていき、加害者だったまりなが被害者となり、ついには「タコピーの原罪」にとってのもう1人のヒロインに変貌しました。
その描写は見事でしたが、何よりも見事だったのは最終話にて対立(対比)していたしずかとまりながタコピーを失ったことで垣根が崩れて友人同士になったことです。
2人の家庭問題は解決していないものの、遠慮なしに文句を言い合える関係になったのは唯一の救いでしょう。
考察できる楽しさ
「タコピーの原罪」は予想もつかない展開も売りの1つでしたが、2016年の真相が明らかになるまで多くのユーザーが考察を展開していました。
作中、「タコピーの原罪」ではタコピーがしずかを幸せにするために何度もタイムトリップを繰り返しています。
そしてしずか編の枠が白く、まりな編の枠が黒かったことから時系列について疑問視していたユーザーがいたりしました。
そして第1話で旅立つタコピーを泣きながら見送るハッピー星人がいたシーンから
・まりな編でトラブルが起きた?
・タコピーが何らかのアクシデントで追放された?
・まりながハッピー星に行ってトラブルを起こした?
など様々な説が立ち上がったものです。
元々「タコピーの原罪」はドス黒い要素が多いながらもミステリアスな描写が考察意欲を湧きあがらせていました。
それはネタバレが解禁した現在では見返す楽しみとなり、「タコピーの原罪」の人気を支えています。
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「タコピーの原罪」救いのない現実と突き付けられ、絶望と向き合い、現実を生きる
サブカルチャー作品に求める要素は多種多様であれど、誰もが漫画・アニメ・映画・ドラマ・ゲームなどに明るいものを求めているかと思います。
しかし「タコピーの原罪」はその反対に位置する作品です。
作者や読者(視聴者)の「笑いたい」「癒されたい」「和みたい」といった願いを否定し、これでもかと過酷なリアリティを突き付けます。
けれども、それが気持ちいい。
だって嘘をついていないから。
「タコピーの原罪」は確かに胸糞展開ばかりでしたが、「嘘をつかなかった」という意味では誠実でした。
むしろ作者が胸糞展開を放り出さず、描き続けたのは負っていた責任を全うしたのは尊敬すら覚えます。
その姿勢は大人たちが放り出している「教えること」を果たしているような気がしますね。
聞いた噂では今時の小中学校では性教育を疎かにしているとか。
性教育をしたことで親からのクレームが激しくなったため、わざと教えずにいたところ、高校生になっても性行為を知らずに異性と付き合う事例が増加。
子供は教わらないと、視野の狭い人間になります。
視野の狭さとは常識のなさ・他人の話を聞かない・謝らないなどをもたらします。
あえて絶望を突き付けることで現実を生きることを「タコピーの原罪」は教えているような気がしました。
まとめ
「タコピーの原罪」がなぜ人気なのか。
それは色々あるでしょうが、伏線回収のあざやかさ・無駄のないテンポと描写・考察する楽しさが挙げられるかと思います。 けれど何よりも「タコピーの原罪」が人気を集めたのは絶望もしくは現実に誠実だったからではないでしょうか。