「大神神社に結界はあるのか」、そんな疑問を抱いたことはあるでしょうか?
伊勢神宮では四方を「四至神」が守護していると聞きますが、大神神社では結界のお話は聞いたことがありません。
むしろ不思議な話をよく耳にします……が、実は大神神社の結界の要になっていると思われる神社を見つけました。
それは綱越神社、一の鳥居近くにある小さな神社です。
今回はこの綱越神社と大神神社の不思議な話などについてまとめていきます。
大神神社の結界、その要は綱越神社?
・綱越神社(つなこしじんじゃ)
住所 | 奈良県桜井市三輪1168 |
電話番号 | 0744-42-6633 |
ご祭神 | 祓戸大神 |
綱越神社の概要
綱越神社とは大神神社の摂社の1つで、一の鳥居の近くにひっそりと佇む神社です。
三輪にたどり着いたら誰もが目にする「大鳥居」を目指し、その周辺を散策すれば見つけられると思います。
とても小さな神社で、大神神社とは無関係にも思えますが、それは勘違いです。
綱越神社の創建・由来は不明なところもあるものの、大神神社にまつわる祓いを古くから担っていました。
例えば大神神社には欠かせない「大神祭」、この神事を執り行う前日に関係者は三輪川で禊をした後、綱越神社でお祓いの議を受けるそうです。
そうでなくても綱越神社の例祭は「夏越しの祓え」で、地元からは「おんぱら祭」と親しまれています。
そもそも綱越神社自体「おんぱらさん」と呼ばれているだけでなく、「綱越」は「夏越し」がなまったものだと考えられているようです。
そんな綱越神社の「おんぱら祭」は神職が大祓詞を唱えつつ、神馬をひきながらグルリと境内を三周したり、また境内の東西に茅の輪を設けたりといったように本格的な祭事となっています。
町の神社であれば夏越しの祓として茅の輪くぐりできるようにしているものの、ここまで本格的に執り行っているのは珍しい気がします。
綱越神社のご祭神・祓戸大神は神道における祓いの神様なので当然かもしれませんが、それなら大神神社の参道途中にある「祓戸社」も同じでしょう。
しかし綱越神社と祓戸社には違いがあり、それは
・お祀りしている神様が少し違う
ことに尽きます。
「祓戸大神」と「祓戸四柱」
綱越神社は「祓戸大神」であるのに対し、祓戸社は「瀬織津比売神(せおりつひめ)・
速開都比売神(はやあきつひめ)・気吹戸主神(いぶきどぬし)・速佐須良比売神(はやさすらひめ)」の祓戸四柱をお祀りしているのです。
ここで「祓戸大神」と「祓戸四柱」の定義について、簡単に説明すると
・「祓戸大神」=黄泉比良坂から帰還した伊弉諾(いざなぎ)尊が禊をしたときに生まれた神々の総称
・「祓戸四柱」=葦原中国(日本)のあらゆる罪・穢れを祓う神々。それぞれに役割がある
となっています。
その「祓戸四柱」の役割というのが、
・瀬織津比売神:あらゆる災い・罪・穢れを川から海へ流す
・速開都比売神:瀬織津比売神が流した災い・罪・穢れを河口や海の底で待ち構え、その一切を飲み込む
・気吹戸主神:速開都比売神が飲み込んだ災い・罪・穢れを根の国・底の国にその息吹を放つ
・速佐須良比売神:気吹戸主神が放った災い・罪・穢れを根の国・底の国にて、さすらい、失わせる
というようにバトンタッチで災い・罪・穢れの対応をしているようです。
この「祓戸四柱」を「祓戸大神」としていることもありますが、祓戸社では「祓戸四柱を祀っている」と明確に説明しているのに対し、綱越神社の「祓戸大神」はその解説がされていません。
そのため両者はそれぞれ違う神様だと考えられます。
綱越神社そのものが結界を担っている?
大神神社の周辺にはいくつもの摂社があり、その端には玉列神社や富士・厳島神社などが鎮座しています。
しかし綱越神社は大鳥居、一の鳥居のすぐ近く……もっと言うなら
・大神神社の正面
に位置する神社です。
大神神社に続く道は横道もありますが、正面はいわば玄関です。
そんな大切な箇所に綱越神社があるのは偶然ではなく、また境内には2つの磐座(筆者は「神が座られる岩石」と解釈しています)もあることから、かなり神聖な地だと思われます。
そもそもな話、「大神神社に結界があるのか?」という疑問に確かな答えがないものの、少なくとも綱越神社が大神神社にとって重要な神社であるのは間違いなさそうです。
けっこう見落としがちですが、一度行ってみるのもいいかもしれません。
(筆者も一度迷った偶然で訪れたことがありましたが、とても居心地のいい神社だったのでおすすめです)
大神神社の不思議な話
元々、大神神社ひいては三輪山は神代の頃から伝承の舞台でした。
例えば
・夜にしか現れない愛しい人を知りたくて、着物の裾に糸を通した活玉依姫(いくたまよりひめ)
・同じく夫を知りたいばかりに、正体を明かした夫を怒らせてしまった倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)
など長い間、皇室や日本の神話と関わりがありました。
現在はそこまでスケールの大きな話ではないものの、
・三輪山登拝中に転んでしまったが、怪我もしなかったし、どこも汚れてなかった
・三輪山は行こうと思っても呼ばれないと行けない
・「巳の神杉」で白蛇を見た!
・けっこう急こう配が続いたのに全く疲れなかった
といった話が「大神神社の不思議な話」として巷で囁かれています。
これらの話の真偽については白黒区別することはできませんが、少なくとも大神神社には不思議なことが起こっても納得できる「何か」があると思います。
大神神社の隠れスポットは山の辺の道にあり?
大神神社で不思議な話を調べると大神神社の公式HPで掲載している「境内マップ」にはないスポットのお話を見かけます(例、龍神神社や注連縄で囲われた岩など)
しかしそのスポットの位置は明かされておらず、「もしかしたら異空間……?」なんて思ってしまいそうですが
・山の辺の道
にあるのではないかと思います。
「山の辺の道」とは奈良~三輪まで続いている最古の古道で、全長26kmであるものの、私たちに親しまれている「山の辺の道」は天理~桜井までの16kmです。
ハイキングコースとして観光客や参拝客が歩いていますが、全てを歩くには1日が必要になります。
いちおう道から逸れれば交通機関を利用できるので離脱は可能です。
ただし桜井・天理駅では自転車のレンタルができるものの、木の根があらわになっている道中を考えると自転車での「山の辺の道」の踏破は難しいと思います。
なぜ「山の辺の道」を持ち出すのかと言ったら、先述した隠れスポットがあるのではないか?と愚考しているからです。
現に龍神神社は山の辺の道付近にあるらしく、岩に関しても「挟井神社から久延彦神社で出会った男性について行ったら云々」とあります。
「山の辺の道」の入り口はこの挟井神社から久延彦神社にあるうえに、道中「貴船神社」という神社も鎮座しているため、人知れない隠れスポットがある可能性は高いです。
まとめ
大神神社の結界として「綱越神社(おんぱらさん)」がかなり重要な立ち位置にいるのが判明しました。
少々不明なところはあるものの、かなり祓いの儀式(夏越しの祓え)に力を入れているあたり、祓い清めを重要視していることがよく分かります。
大神神社の不思議な話は定番中の定番な話です。
隠れスポットについては山の辺の道まで足を伸ばす必要があるかもしれません。
以上、ここまで読んでいただいて有難うございました!